サーフビート(Surf beat)
 海の辞典によると、サーフビートは次の様に定義されている。
「海浜域に見られる周期が2〜3分程度の水位の変動をいう。海岸に押し寄せる波には、
音波のうなりのように、通常高い波がしばらく続いた後、低い波が続く性質を持つ。
これに応じて、高い砕け波が続いたとき一時的に碎波帯付近の水位が高まり、低い波
が続いた時水位が低くなる現象が、サーフビートを起こすと考えられている。」
 また、東京大学公開講座「海の波と流れ」で吉田耕造氏は次の様に述べている(1)。
「サーフ・ビートの発生メカニズムは解明されておらず、沿岸に存在する不思議な波
である。沿岸には、たかだか振幅10cm程度の水位変動が存在しており、既に100年程度
前にG.H.ダーウィンが非常に不思議な水位変動として、'潮汐'という本に記述してい
る。この波の発生メカニズムについては所説あるが、米国のW.H.ムンクは、'海岸で
砕波する波が数分程度の群をなして、大きく砕波したりしなかったりを繰り返すことが
原因である'とした。そして、'数分周期の水位変動は外洋のけわしい波群によって生じ
る'、'海底地形が影響している'等の説があるが定説は存在していない。振幅の大きい
小さいを繰り返すビート(唸り)だけではなく、平均の水位自体が昇降を繰り返す。」

 しかし、最近の研究により、沿岸の水平浅瀬域に侵入したうねり性波浪が水平浅瀬
域で変形することにより様々な周期の波が生じ、そのうち水平浅瀬域の固有振動周期
(数分周期)と同じ周期の波はあまり減衰しない。そして、次々に押し寄せてくる波に
より、固有振動周期(数分周期)の波が成長する。さらに、この数分周期の波(固有振動)
の影響を受けてうねり性波浪が数分周期でビートすることが明らかになっている(2)(3)。
英語の辞書によると、Surfは「沿岸に打ち寄せる波」であり、Beatは「振動(波)の唸り」
すなわち波の波高が周期的に変動することである。従って、Surf beatは、次のように
定義するのが自然である。
「沿岸に押し寄せる波の波高が、数分周期から数十分周期の波の影響を受けて、その
波の周期(数分〜数十分)で大きくなったり小さくなったりする現象」
 ここで、数分周期の波は、うねり性波浪により沿岸の水平浅瀬域で駆動されたもの
である。そして、沿岸域に存在する数十分周期の波についても沿岸域における固有振動
であると考えられるが、これらの波を駆動する力(数十分周期の波の発生メカニズム)に
ついては、よく分かっていない。

☆参考文献
(1)加藤一郎:東京大学公開講座15,海,東京大学出版会,pp.161-162,1980.12.
(2)河合雅司・永松宏一・後藤佑介:水平浅瀬域の固有振動と入射波のビート現象に
ついて, 日本航海学会論文集,第137巻, pp.59-65, 2017.12.
(3)河合雅司・田村政彦・茂田誠:富山湾沿岸におけるうねり性波浪の長周期
ビート現象,日本航海学会論文集,第140巻,pp.55-60,2019.07.


図1 サーフビート(Surf beat) 2017年12月26日 16時05分〜 (海老江沖)
   図2 富山湾地図 [波浪観測地点(海老江沖)]