富山県や石川県の能登地方では、古くから立山連峰が昼間
に「ぴかぴか」、「すっきり」、「きれいに」といった表現
で見えると、その夜か翌日には天候が悪化していくという気
象予測のことわざがある。
富山平野は、西方の能登半島は標高約300〜1,000mクラス、
南方の中央山脈は約1,000〜2,000mクラス、そして東から南方
にかけて約2000m〜3000m級の山が連なる立山連峰に囲まれて
いる。これより、この立山連峰が、この地域の気象現象に大
きく影響を及ぼしていることが予測できる。しかし、先のこ
とわざに対する理論的な探求例は見当たらない。そこで、ま
ず実際に富山平野から見る立山連峰が、こうした視程になっ
た場合の気象変化の実地観測を行った。そして、併せて地上
天気図だけで無く、気象現象の立体視を行うため、高層天気
図を用いた現象解析を行った。ここでは標高3000m級の山脈
周囲の気流を解析することになるので、大気を立体的に見る
高層天気図が有用となる。これにより立山連峰が富山の気象
に影響を与える一端を知ることができる。
富山商船高専は富山平野の、ほぼ中央部の海岸沿いにあり、
常に東方に立山連峰を眺める位置にある。卒業研究として本
テーマを立ち上げて、一年以上の実視観測を行った。ここで
春から夏にかけて良く発生するフェーン現象による山肌から
の吹き降ろしが立山連峰の視程の透明度を上げていることが
分かった。そして、気温の低下と静穏な風が続いた場合に起
こる「立山がすっきり見えると雨(または雪)」の現象解析
を各種の高層天気図(500hPa、700hPa、850hPa)を用いて行っ
た。ここで得た総合考察の結果を以下に示す。
@気圧傾度が緩く風が弱い状況と、気温の低下の放射冷却
による局地的な寒冷高気圧が発生する。
A気温が低下し、高気圧性の下降流となるので、視界が良
くなる。
B西方から気圧傾度が強く等圧線の湾曲部分(低圧部)の接
近による暖気移流が起こり、大気が不安定化し降雨か降
雪となる。
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