ピースボートの旅で見た世界 |
当会会長・富山商船高専名誉教授 石森 繁樹 |
ピースボート 「平和と環境」のメッセージを世界に発信して行動するNGO. の活動の一つが客船による地球一周の旅. 参加の動機 地球一周の船旅はひとつの夢であったこと. 安い費用で気楽な船旅ができるということ. 南半球の航路と寄港地に惹かれたこと. 健康で気力のあるうちにと家族のあと押しもあったこと. |
船旅で見たこと考えたこと(スライド) (東南アジア) |
スービック:フイリッピン共和国1946 ピナツボ火山爆発1991 (パラソル効果で1993日本冷夏・大凶作、全球オゾン量極小へ) 安保廃棄と米軍基地(スービック海軍・クラーク空軍基地)と その後−失業、環境汚染(有害廃棄物、地下水汚染)、 再開発(フリーポートゾーン)、観光政策、ジャピーノ、 自然災害国フイリッピン |
ブンタウ:ベトナム社会主義共和国1976 大河メコン川の恵み、社会主義国ベトナムの商業都市ホーチミン はドイモイ開放政策による自由競争で街は活気づいたがサイゴン川 を渡るとひどいスラム街がひろがる、戦争の傷跡、物売り娘と子供、 市場経済で農村の階層分化や貧富の拡大がはじまるか、バイクの 洪水、テレビ普及率70%、朝は外食、10000d(ドン)=70円、 十二支(兎−ネコ、猪−豚、ひつじ−山羊)、安南、御朱印船貿易 |
シンガポール:シンガポール共和国(マレーシナより独立)1965 移民の国(華僑、印僑、マレー人、アラブ人、英人)、マラッカ海峡要衝 の地(著しい経済発展と地政学)、港湾貨物取扱量世界第2位、 外食(市場、キッチンのないアパート)、厳しい法律・罰金、Singlish 罰金について: ・Smoking in a public place - $500 ・Throwing a cigarette butt on the street - $1000 ・Jaywalking - $50 ・Eating, drinking, or smoking on MRT ( public transportation ) - $500 ・Sale, importation, and possession of chewing gum - heavy fines ・Vandalism - Caning ・Importing drugs - Death penalty SINGLISH(中国語、マレー語、タミル語を取り入れた英語)の例 ・reverse stress pattern (fire FIGHTER instead of FIRE fighter) ・ending sentences with "lah", as in " no good lha ". ・verb tenses are non-existent ("I go yesterday" instead of "I went yesterday") ・Alamak! = exclamation of disbelief |
(アフリカ) |
セーシェル:セーシェル共和国1976(英領から独立) 18世紀以降の入植で混血クレオールの国に、115の島 (花崗岩とさんご礁)から成る、ゾウガメと双子椰子、花崗岩の護岸堤、 豊かな香草(レモングラス、ジャパニーズミント、シナモン)が 船旅の慰み草になった |
モンバサ島:ケニア共和国1963(英領から独立) Port of Killindini港、 ケニア最古の都市(プトレオマイオスの地図 AD150)、 天然の良港でローマ、ペルシャ、インド、アラビア人との交易 (今もアラブ風のダウ船が行き来する)、 16世紀以降ポルトガルの奴隷貿易拠点、動物王国ケニア(ツアボ国立公園) のサファリ体験、ハクナマタータ(ノープロブレム)と ポレポレ(ゆっくりのんびり)の国 |
ケープタウン:南アフリカ共和国1961(1994マンデラ政権) アパルトヘイト(人種隔離政策1948〜1996)とネルソン・マンデラ (ロベン島1964〜1990)、気候温和で豊かな資源を有するコイ・サンの国、 大航海時代(ディアス、バスコ・ダ・ガマ)― オランダの入植 (東インド会社の補給基地1652)― 列強の侵略と植民地化 ― 奴隷貿易 (今日的アフリカ問題の根源は、元気で若い働き手を数世紀にわたり 根こそぎ連れ去った欧米の犯罪行為以外に考えにくい)、 高級住宅地・カラード居住区・黒人居住区が判然と区分される現実、 ゆゆしき貧困とエイズ、はたして「虹の国」になりうるか、 テーブルマウンテン(古い地質で500Ma,ヒマラヤ40Ma、ロッキー60Ma) |
ウオルビスベイ:ナミビア共和国1990独立(南アフリカから) ナミブ砂漠(コイサンの言葉で「何もないところ」、しかしダイヤやウラン等 鉱物資源豊富)、砂漠と礫まじりの荒涼たる大地がひろがる 不可思議な景観美、亜熱帯高気圧とベンゲラ海流(寒流)が砂漠をつくる、 西岸は航海の難所(骸骨海岸)、ウェルウィッチア(奇想天外)、 スワコップムンド(ドイツ系住民の街、避暑地)、塩 |
(南アメリカ) |
リオデジャネイロ:ブラジル連邦共和国1822独立(ポルトガルから),1985民政移管 アフリカ奴隷を移入・使役してサトウキビ・プランテーション経営、 のちコーヒー・ブームでヨーロッパ移民、多様な人種、ポルトガル語、 コルコバードの丘、コパカバーナ、国際観光都市(光)、 ファベーラ(麻薬犯罪組織に支配されたスラム,リオ州に650箇所,強盗殺人多発) ストリート・チルドレン、貧富の差が世界一の国(影)、アフリカ大陸と テクトニクス的に分離した古い地質 |
ブエノスアイレス:アルゼンチン共和国1816独立(スペインから)、1983民政移管 白人の街、スペイン語、ラプラタ川、 五月広場(人気があったペロン大統領,エビータの時代から ビデラの暗黒時代1976〜1983,人権弾圧20万人の粛清,「5月広場の母たち」) フォークランド紛争、1999の経済危機、ボカ地区とアルゼンチン・タンゴ、 カルロス・ガルデル、ユパンキとソーサのフォルクローレ、 COP10(第10回気候変動枠組み条約国会議)会場訪問:政府レベルの交渉から 各種団体参加のサイド・イべント、日本の二酸化炭素排出削減目標達成なる か(0.5%国内削減、3.9%森林吸収、他はCDMクリーン開発メカニズムを活用)、 日本経済産業省と環境省で異なる主張、NGOから地球温暖化の実態報告、 2013年以降の枠組規定をどうするか、果たして国益・企業益ならぬ"地球益"へ 向かうことができるか |
ウシュアイア:アルゼンチン、世界最南端フェゴ島の町、ビーグル水道・マゼラン海峡、 ダーウィンのビーグル号航海記、パタゴニアの氷河、 ダーウインはパタゴニアを「巨大な白い花が咲き誇っているようだ」と 表現した 「Patagonia, as remote and untamed as it is beautiful and unfamiliar, has recently been discovered by tourism. Known as "the uttermost part of the earth", Patagonia lies on the last tapering segment of the South American continent, closer to Antarctica than any other part of the world…. Blessed with isolation, fierce and unpredictable winds, and desolate terrain, the region still boasts the same species Magellan saw when he first sailed along its coasts in 1520, and the same landscapes and animals Charles Darwin's expedition found three centuries later…」、 The Spirit of Patagonia, E.C.Menendez & J. Rossi, 2002から |
バルパライソ:チリ共和国1818独立(スペインから)、1989民政移管 旧市街町並みが世界遺産の坂の町、チリの首都サンチャゴの外港で 漁船・商船・客船・軍艦で賑わう港湾、百万ドルの夜景、サンチャゴ、 大統領府モネダ宮殿(世界初の選挙でアジェンデ社会主義政権誕生1970、 ピノチェットの軍事クーデターで1973.9.11死去、その後2万人が逮捕 殺害さる)、 フォルクローレ(人間の愛とやさしさを絆とする連帯意識を歌う)、 ワイナリー、パブロ・ネルーダ(愛と革命の詩人、ノーベル文学賞)、 「さようなら 暗殺された われらの将軍よあなたの思い出は 生きつづけるだろう アンデスの峰の 輝く雪のように」 『パブロ・ネルーダ』、大島博光著、新日本新書より |
(オセアニア) |
イースター島:オランダ人の発見1722、チリ領 ラパ・ヌイ、東太平洋海嶺の東300kmのホット・スポットで 誕生した絶海の孤島(2.5Ma)、海岸は断崖となっており 海水温度が低いためサンゴ礁なし、高温マグマが固結した玄武岩 の島で作物が育ちにくく今は樹木も殆どない、島の羅漢さんモアイ (900から1600年にかけて建造された?柔らかい凝灰岩を彫る)、 アフ・トンガリキ(1960のチリ津波に襲われる、日本企業タダノ)、 未解読の刻文ロンゴ・ロンゴ、ポリネシア大三角圏の東端 |
タヒチ:ウォリス(英)の発見1767 仏領ポリネシア最大の島、玄武岩の島とさんご礁、主都パピエテ、 食べものに困らず世事に無頓着、いまは物価高の「南海の楽園」、 本物がないゴーギャン博物館、とんでもない核実験、 フランス植民地から脱却なるか |
オークランド:ニュージーランド1907、1947(英国法から独立) 元首は英国女王エリザベス2世 ニュージーランド「アオテ・アロア」北島の近代的都市、 オークランド博物館にみる先住民族マオリとポリネシアの文化、 ポリネシア大三角圏の西端、ポリネシア人のルーツ探し |
シドニー:オーストラリア1901、1931(英国法から独立) 元首は英国女王エリザベス2世 多民族国家オーストラリアの港町、世界3美港のひとつ、 乾燥大陸で40%が砂漠、西岸沖を西オーストラリア海流(寒流) が洗う、アボリジニは25000年前にアジア大陸から移住定着、 現在は15万人がリザーブに住む、日本料理、ボンダイGC |
ラバウル:パプアニューギニア1946、国連信託地 元首は英国女王エリザベス2世 シンプソン港、1994の火山噴火で町の殆どが火山灰に埋もれた、 旧日本軍の海軍司令部があったところ、沈船、ダブルブル山と バルカン山、天然の良港シンプソン湾も噴火湾、カラフルな パプアニューギニアのマーケット、ビンロウを噛むな! |
おわりに |
☆船旅を身近なものにしてくれたピースボートの企画(若者の行動力)に 感謝したい。 ☆大航海時代に始まる西欧列国植民地政策の負の遺産が今もアフリカ、 アジア、オセアニア、南米に色濃く残っていることを見た。 ☆太平洋の古代から現代に至る歴史(たとえばメコン川から海に進出 したモンゴロイドのポリネシア文化圏創出説)に親近感をおぼえた。 ☆あらためて海の広さを知り、遠い存在であった砂漠や氷河の姿に 接することで、さらに地球に対する興味関心が強くなった。 |